長門峡に棲む動物としては、珍中の珍として、モリアオガエルとルーミスシジミ(蝶)を挙げることができます。ともに峡中の名所鈴ケ屋付近で、ルーミスシジミは中国地方では隠岐のほか、ここにしかおりません。モリアオガエルも従来、山口県ではここだけといわれていましたが、最近、豊浦郡豊田湖・美祢郡秋芳町・玖珂郡錦町須川でも採集されました。しかし、各地とも卵塊は数個以下ということから、100個以上もあるこの地域とは、全く比べものになりません。

 

  また、山口大学の長谷芳美教授は高山性のタゴアカガエルが山口市錦溪滝付近・法泉寺裏山の清水と長門峡に棲息することを報告しておられます。

 

  蝶は、サツマシジミ・サカハチョウ・スミナガシ・シータテハ・ゴイシシジミ・キマダラセセリ・ヒメキマダラセセリ・ヘリグロチャバネセセリ・イシガケチョウなどの珍蝶が棲息しております。このように長門峡は、実に、地質学的のみならず、生物学的にも貴重な宝庫で、興味深いものが沢山あります。

 鳥では、晩春からウグイスの囀えずる美声に酔い、シジュウガラ・ゴジュウガラ・メジロなどが戯れて目を楽しませ、ホトトギスやカッコウに驚かされ、カワセミやカワガラス(川烏)が間断なく溪流にそって飛び交うなど、ここでなければ味わえぬ風情があります。

 峡流にはアユ(鮎・香魚・方言あい)・コイ(鯉)・ウナギ(鰻)・ウグイ(石斑魚・方言いだ)・オイカワ(追河・方言・はい・はや)などの魚類がすみ、林間には往々、ニホンザルの大群も見られます。



 長門峡の峡谷の美しさは、千変万化の奇岩・径岩・澄みとおった湲流・それは稀有植物を含めた植物粗の調和にあります。


 峡内は植物の種類も多く、就中、カワラハンノキ・ヨコグラノキ・ウドカズラ・チトセカズラ・ナガトザサ・アオヤギソウ・セキコク(石斛・古名すくなひこのくすね、いわぐすり)・ムギラン(麦斛)・マメジタラン(マメラン)・アキカサスゲ・タイリンアオイ・イワヒバ(巻柏・両国本草に岩松)などが注目されます。


羊歯類(しだ類)も多く、ハイホラゴケ・イヌワラビ・タニイヌワラビ・キヨスミヒメワラビ・コバノヒノキシダ・オウレンシダ・ヤブソテツ(貫衆・方言おにわらび・やまどりかくし)・ヒロハヤブソテツ・ヤマイタチシダ・クマワラビ・イノデ・ヒムカナワラビ・シュウモンジシダ・ホソバカナワラビ・ハカタシダ・イヌシダ・イワガネソウ・イワガネゼンマイ・シケシダ・ノキシノブ(瓦韋・剣丹)・トウゴケシダ・ヒメシダ・フモトシダ・ミツデウラボシ・ヘビノネゴザ・クリハラン・コタニワタリ・チャセンシダ・イヌチャセンシダ・ツルデンダ・ヤシャゼンマイ・タカサゴキジノオ・マメヅタ・アオネカヅラ・タチノブ・イノモトソウ・オオバノイノモトソウなどが見られ、蘇苔類も豊富で、珍らしいものも少くありませんが、特にミズスギモドキ(オオバミズヒキゴケ)・トサノサガリゴケ・タイワンノコギリゴケ・タチヒラゴケ・ケサガリゴケ・チジミサカバゴケ・タカサゴガリゴケ・ザラザラゴケなどは、注目に価します。