そのむかし、長門峡にいた化け物をたいじして、そのお礼に、乙姫様から竜宮城で大変なもてなしを受けた勇敢な猟師がおりました。
たくさんの宝物をおみやげに、竜宮城から帰ってきた猟師は、長者となって幸せにくらしていました。それから何年かたったころ、長者は長者ヶ原に、お城の天守閣のような形をした八棟づくりというたいそうりっぱなごてんを建てて、くらしていました。
ある日、長者は日南瀬(ひなたせ)(旭村佐々並)の長者と米俵をうばいあう競争をすることになりました。米俵をたくさん積み上げて、その中から米俵をひきぬいてうばい合うという力くらべです。
ふたりの長者が米俵をうばい合いをすると聞いて、村のあちこちからたくさんの人たちが見物にやってきました。
いよいよ競争が始まりました。
「ええい!負けてなるものか」
ふたりの長者は、どちらも腕には自信がありました。たがいに力をふりしぼって、必死に米俵をうばい合いました。しかし長者原の長者は負けてしまい、たくさんの米俵を一度にうしなってしまったのです。
長者はこの結果をたいそうくやみ、家宝にしていた金のにわとりをだいて、長者ヶ淵に身を投げてしまったのです。
それはちょうど8月15日のことで、それからこの日になると長者ヶ淵ににわとりの鳴き声がひびきわたるようになったといわれます。